提灯職人 茨田 和茂さん
『三浦屋提灯店〜大森』
住所:大森東1-6-10
電話:03-3761-0632
営業時間:9〜19時
定休日:日曜祭日
三浦屋8代目
いま、提灯のある生活をしている家はあるだろうか。戦後間もない頃まで、提灯は日用品として普通に家にあったものだという。そのため、当時駅前以上に人通りがあった旧東海道の美原通りは、提灯屋が何軒も並んでいたそうだ。三浦屋もその一軒だった。しかし、気づいたら茨田さんで8代目。美原通りに他の提灯屋の姿はなくなっていた。
三浦屋の暖簾を継いで8代目、茨田さんは父親の代からとなる。父親の仕事をする姿を見ているうちに興味を持ち、見真似で始めてみると面白さを覚え、自然と継ぐことを考え、仕事として始めるようになったという。
自分だけの“字”で個性を
「東京では提灯屋は“書き屋”なんですよ」
というのも、真っ白な和紙が貼られた提灯に筆を入れて作品にするのが仕事。もちろん、文字の配分、色使い等も大きな要素だが、一番個性が出るのは、提灯の命でもある“字”。決まった字体があるわけではなく、自分だけの“字”を見つけなければならない。この世界で大御所と呼ばれた人の字体を見本に、数をこなして納得のいく“字”を探し続ける。「一人前として出来るようになるまでには、10年くらいかかったと思います」。自分のものにしてしまえば、どんな文字も自分の“字”に書くことは出来るが、やはり書きなれないと自分らしさは発揮できないそうだ。
文字数から配置を割り出し、目安程度に簡単に文字を書き入れる。それを基に文字を書くかのように縁取りを描く。そしてその縁取りの中をぬりつぶしていく。“字を書く”のではなく“字を描いていく”ので、書き順どおりではないし、一文字ずつでもない。全体で“一つの文字”を完成させていく。その手際の良さは、作品を仕上げる職人のこだわりのようにも見える。緊張感の続く作業だが、完成した提灯を前にして味わえる達成感が、何とも言えないとのこと。
墨だったインクはアクリルトリオに替わり、提灯の活躍する場も祭事や飲食店の軒先などに。時代の流れは提灯を取り巻く環境を変えつつあり、好きだけでは続けられなくなってきているそうだ。継いでもらいたくても勧めることも出来ない。今できることは作品を多く残すことだけだと言う。人の手を通して作られる作品には、一つひとつに表れる個性からぬくもりと文化を感じる。日常的ではないが日本人には無くてはならない提灯。我々の心を潤わせてくれる文化を、利用する側も大事にしていかなければならないと、茨田さんの仕事を見て改めて思う。
